日本で学業に専念した1年。コロナ禍を乗り越えてイギリスへ。

藤澤恒太さん

専攻:Engineering and Science

UPAA事務局によるインタビューシリーズ。今回は、クイーンズ大学ベルファスト(QUB)に進学された、藤澤恒太さんにお話を伺います。2019年10月に出願し、クイーンズ大学ベルファストのインターナショナル・ファウンデーション(FDN)への進学を決めた藤澤さん。翌年9月には現地に赴く予定でしたが、COVID-19の感染が広がったため渡英を断念。オンラインでの授業がスタートしました。授業や課題に忙しい1年目を終えた藤澤さんですが、コロナ禍の大学生活は実際どのようなものだったのでしょうか。出願までの道のりや、オンライン授業の様子、友人との交際など、じっくりお話を伺っていきましょう。

藤澤恒太さん プロフィール

2019年7月
IELTS UKVI 6.0 取得
2019年10月
UPAA協定校出願
2019 年10月
クイーンズ大学ベルファスト、ニューカッスル大学 合格
2020年3月
神奈川大学附属高等学校 卒業
2020年9月
クイーンズ大学ベルファスト FDN入学
2021年6月
クイーンズ大学ベルファスト FDN修了
Academic Achievement Award 受賞*
2021年9月~
クイーンズ大学ベルファスト1年生(専攻:化学)
※:FDN生の中で最も成績が優秀な学生らに授与される賞

社会に貢献できる「カッコイイ仕事」をめざして。

UPAA

それでは藤澤さん、よろしくお願いいたします。藤澤さんは創薬に興味があって、理系の分野で入学されたのですよね。きっかけはどんなことだったのでしょう?

藤澤さん

よろしくお願いします。そうですね。中学3年生くらいの頃から漠然と「理系で、社会に貢献できるカッコイイ仕事」をしたいと思っていました。医療関係とか、環境開発問題とか。ちょっと子供っぽくて恥ずかしいんですけど。

その後、生徒の保護者の方が職業についてお話してくださる機会があって、薬剤師という職業に魅力を感じるようになりました。

UPAA

同じ薬を扱う職業ですが、創薬とはまた少し方向性が違いますよね。

藤澤さん

はい。既存の薬を正しく処方使用してもらう、という薬剤師の仕事も素敵だと思っていたのですが、自分の中では「まだない新しい医学の力で社会貢献したい」という気持ちが強くなっていったんです。治療薬がなくて困っている人たちを助けられるように、創薬を学びたいと思うようになりました。

UPAA

進学先として、海外大学を選んだのはどんな理由だったのでしょうか。

藤澤さん

高校1年生のとき、家族でアメリカ旅行をしたんです。初めて海外の文化に触れ、接し方や距離感みたいなものがとても魅力的に感じました。

それまでは千葉大学をめざそうと思っていたのですが、アメリカ旅行の後から海外の大学について調べるようになり、高校2年生の春に海外の大学に進学することを決めました。両親に相談したとき、背中を押してもらえたのをとてもよく覚えています。

UPAA

UPAAの進学相談会にも参加されていましたよね。

藤澤さん

ちょうど母校がUPAAに加盟したタイミングでした。会場で、薬学でも薬剤師ではなく、研究開発をする分野に進みたいと自分の希望を伝えたところ、クイーンズ大学ベルファストを紹介していただいたんです。

UPAA

私たちもよく覚えています。真剣な表情で担当者とお話されていましたね。

藤澤さん

3年生の科目選択も、UPAAの協定大学に進学することを前提に決めました。海外に行くと決めてからは、お昼休みや放課後にネイティブの先生を訪ねて、質問したり会話をしたりして英語に触れる機会を増やしました。学校でそのような機会が得られるのも恵まれていたと思います。

IELTS対策で、自然と英語力が上がっていきました。

UPAA

ちょうど英語のお話が出てきたので、どんな風に勉強をされていたのか教えていただけますか?

藤澤さん

高校2年生の間にIELTSのスコアをクリアすると決めて、IELTSの問題集を何冊もこなしました。IELTSの勉強をしていると自然と英語力が上がって、学校やセンター試験でも満点がとれるほどになりました。海外旅行がきっかけで英語が好きになったことも成績に影響しているかもしれません。

UPAA

好きになると上達も早いですよね。スピーキングについては、どんな準備をされたのでしょう。

藤澤さん

高校3年生から英会話教室に通いました。日常会話レベルのものではなく、ディベートのクラスです。海外赴任予定の社会人も参加するようなクラスだったので、とてもいい経験になりました。大学では授業やグループワークで質問をするときに、自分の意見をしっかり伝えることが大切なのですが、この時の経験が基礎になっているな、と感じます。

UPAA

ほかにも何か工夫されていたことはありますか?

藤澤さん

高校が導入していたオンライン学習の「CollegePathway(カレッジパスウェイ)」もよく利用していました。通学時間を利用して単語の勉強をしたり、自宅のソファーでくつろぎながら勉強したり。少しでも時間が空いた時は勉強していました。学習マイレージが貯まるのが楽しくてモチベーションになりましたし、スマホでできる気軽さもよかったです。

あとは、YouTubeもよく利用していました。「TED」というチャンネルを、字幕あり・なしで繰り返し視聴して、どのくらい理解できたのかをチェックしていました。TEDはプレゼンテーションの組み立て方の参考にもなりました。

CollegePathwayの学習履歴『My Portfolio (※)

(※)My Porfolioは、自分の英語学習の記録を一覧できるCollegePathwayのカルテ機能。リスニングや文法等のスキル別学習時間のデータが自動で集計されグラフや表で分かりやすく表現される。 My Portfolio
上記は藤澤さんの中学3年から高校卒業まで4年間の学習履歴。学習マイレージは24000マイル、単語は15000語を超えているが、特筆すべきは学習の継続性だ。毎日コツコツ取り組んできた様子が『My Portfolio』に表れている。特にIELTS受験前の学習量は急激な伸びだ。学習メダルの獲得数をみてもわかる。

学業には意外なメリット。でも、もしキャンパスにいれば……。

努力の甲斐あって、希望していたクイーンズ大学ベルファスト International Foundationコースへの進学が決定。しかし、イギリス国内の感染状況が悪化してしまい、予定していた9月の渡英は断念されました。

UPAA

ここからは、コロナ禍での学生生活1年目について伺っていきます。日本でのオンライン授業を選択されたわけですが、授業にはリアルタイムで参加されたのでしょうか。

藤澤さん

そうですね。基本的にはリアルタイムです。オンライン授業は日本時間の夕方5時くらいから始まるので、時差で困ることはありませんでした。

International Foundation Program Engineering and Scienceの後期スケジュール。ずらりと並んだ”Online”の文字が印象的。8時間~9時間の時差があるので、日本時間では16時~17時頃から授業が始まる。 UPAA

生活リズムという意味では、それほど無理がなかったのですね。

藤澤さん

むしろ、日本にいたおかげで授業や課題に専念できたのかな、と思います。現地で大学生活を始めていたら、新しい生活環境にも適応しなければなりませんし、学業と両立するのが大変だっただろうな、と。もっとも、キャンパスにいれば友人と買い物や食事に出かけられたのに、とも思いますが……。

UPAA

本当に残念ですよね。他の学生との交流はいかがですか?授業以外の時間で、お話したりする機会はあるのでしょうか。

藤澤さん

特に仲の良い友人が2人います。1人は初めてのグループワークの時に意気投合して、すぐにSNSの連絡先を交換しました。彼はキャンパスで授業に参加していたので、すぐにオンライン授業には参加しなくなってしまいましたが、今でもSNSでやり取りしています。課題の提出期限や提出物を確認したいとき、彼らにとても助けられています。キャンパスで会えるのがとても楽しみです。

UPAA

これからが大学生活の本番ですからね。授業の内容という点ではいかがでしたか?

藤澤さん

英語、化学、生物、数学を履修したのですが、生物、化学、数学は、高校で学んだことを英語で学びなおすような感じです。化学と生物は、高校の基礎レベルが身についていれば問題ないと思います。数学も数IIぐらいまで学んでいれば、十分ついていけます。

どの授業も画面に映したパワーポイントや資料を見ながら講義を受けるのですが、オンラインに配慮した内容になっていたので、特に不便を感じたことはありませんでした。基本的にオンライン授業はオンライン授業専門の先生が担当するのですが、内容はキャンパスで行われている授業と同じものだったのでよかったです。

UPAA

それはよかったです。       

藤澤さん

QUBの先生は、学生の気持ちや発言に対するフォローもしっかりしています。「授業を楽しんでほしい、分からなかったらすぐに言ってね」と、授業中にも頻繁に声をかけてくれるので、初めは大人しかった学生たちもだんだん積極的に質問するようになっていきました。おかげで安心して授業を受けられましたし、授業をよりがんばろうというモチベーションにもなりました。

そういうproactiveな意見交換のできる授業に憧れていたので、海外大学進学を選んでよかったなと感じています。

UPAA

先生が上手に学生を巻き込んでくれるのですね。オンライン授業は受け身になりがちですし、とても大切なことだと思います。ところで、授業の進め方ですが、やはり講義中心ですか?

藤澤さん

講義が8割、残りの2割が演習の時間です。化学や生物では、グループ作業もありました。「Microsoft Teams」にブレークアウトルームという機能があるのですが、それを使って先生が学生を3~4人のグループに割り振ります。そこで話し合いながら問題を解いて、その後でまた全員で答え合わせをする、という流れです。

UPAA

どんな問題が出るのでしょうか。    

藤澤さん

たとえばですが、ある授業では心臓の部位の穴埋め問題をグループで解きました。英語は自分よりも上手な人ばかりでしたが、僕はどちらかというと積極的に話すタイプなので、皆が沈黙している場面でもいろいろ問いかけたり、きっかけを作ろうと自分から話しかけたりしました。もちろんオンライン授業が苦手な学生もいるので、会話が弾まないこともありますが、基本的には協力して進めることができたと思います。

UPAA

生物や化学の授業だと、通常は実験もありますよね。オンラインではどう対応されていたのでしょうか?

藤澤さん

さすがに自分たちで実験するは無理ですね。実際の実験は先生が行い、学生はレポートに実験の工程や結果を正しくまとめる、という授業でした。

たとえば浸透圧の実験では、ポテトを均等に切って異なる濃度の食塩水に浸け、伸縮度合いを測定して結果をまとめる、というものがありました。ほかにも、薬品を使った実験で、混合したときに透明になるか・ならないかを調べて、化学反応式を書くというものもありましたね。高校の授業で行った実験と同じような内容です。

UPAA

このあたりはオンライン授業の限界を感じるところですね。他に、何か困ったことなどはありませんでしたか?

藤澤さん

そうですね、やはり、すぐに先生に質問できないことでしょうか。授業や課題でわからないことがあっても、キャンパスにいれば、休み時間や放課後に先生をつかまえられます。ですが、オンラインでは授業中に聞くか、メールで質問するかのどちらかしかありません。すぐに不明点を解決できないこともあったので、そういう時はもどかしかったですね。

グループ課題もオンラインで。貴重な学びがありました。

UPAA

授業外の時間で取り組む課題もあったと思います。どのように取り組まれたのか教えていただけますか?

藤澤さん

英語は週4で授業があって、ほぼ毎回課題がありました。ほとんどの場合、次の授業までにやらなければいけなかったので、毎日課題が出ているような状態でしたね。数学は、授業用のポータルサイトにアップロードされた問題を見て、ノートに手書きした回答を写真かPDFで提出する、というスタイルが多かったです。

UPAA

毎日勉強漬けですね。オンラインでも、海外の大学は手抜きをさせませんね。

藤澤さん

Web上で演習問題を解く課題もあったのですが、解答時間がコンピュータで計測されていて、先生に分かるようになっていました。解答が早すぎて注意されている学生もいて、たぶんあまり考えずに答えていたのでしょうね。オンライン授業に適応した仕組みがしっかりできていることに驚きました。

化学や生物では、オンラインで回答できる選択式の課題や、グループプロジェクトがありました。3~4名のグループで、テーマを決めて授業でプレゼンテーションする、といったものです。

UPAA

面白そうですね。たとえば、どんなテーマで発表されたのですか?

藤澤さん

生物では、人口爆発の影響について、というテーマの発表を行いました。開発途上国では、金銭経済的な問題から子供を労働資源にあてることがあるのですが、それが社会にどのような影響を及ぼすか、という内容です。メンバーの1人が発案してくれたテーマで、満場一致で決まりました。

UPAA

グループプロジェクトの資料作りはどのように進めていくのでしょうか。

藤澤さん

オンラインで話し合いの場を設けながら、プレゼンテーション用の資料作りを進めていきました。時差がある学生と同じグループになったときは、お互いの時差を考慮してミーティングの時間を設定します。先生にもよりますが、日本、中国、韓国など、時差の近い学生同士を同じグループにしてもらえると、時差が少ないので助かりました。逆に、中東の学生がグループにいた時は、話し合いの時間を合わせるのが大変でした。

Encouragement of Healthy Lifestyle during the COVID 19

Poster Presentationと呼ばれる英語のグループ課題。資料をもとに任意の仮説を立証し、20分ほどでプレゼンするというもの。グループミーティングの時間がなかなか合わず、大変だったとか。 UPAA

リアルとはまた違った気遣いが必要になりそうですね。実際に集まって作業ができないのは、やはり大変そうです。

藤澤さん

これはオンラインならではのメリットかもしれませんが、ひとつの資料を全員で共有できるようになっていて、誰かが編集していると、ドキュメント上に編集中の学生のイニシャルが表示されるんです。テキストなどが追記されていくのをリアルタイムで見ていると、やる気が刺激されて、一緒に作業を進めたこともありました。

UPAA

資料やレポートを作る時に気を付けたことはありますか?

藤澤さん

論文を正しく引用する、ということです。入学したての頃、先生から正しく引用することの重要さについて丁寧に教えられました。ルールを少しでも守れていないと盗作・盗用となり、成績の評価をもらえません。今後、レポートや論文を書く時にも大切な知識だと思います。とても勉強になりました。

化学の後期レポート課題。理系のレポートは形式が決まっていて、ルールに則って正しく書くことに苦労したとのこと。 UPAA

必要な文献はどうやって集めたのでしょう。オンラインだと制約も多かったのではないでしょうか。

藤澤さん

電子図書館が充実していて、自由に文献を閲覧できるようになっていたのでとても助かりました。QUBが公開している論文もたくさん読みました。推奨される文献、推奨されない文献、何冊ぐらいの文献を参照すべきかなど、文献の選び方については先生からアドバイスをいただきました。

UPAA

これからの大学生活でも役立ちそうな、良い経験ができましたね。

藤澤さん

ええ、グループプロジェクトは本当にいい経験になりました。期限ぎりぎりまで手をつけない学生と同じグループになったこともありましたが、他のメンバーと一緒に、どうしたらその人が取り組んでくれるかを考えました。幸い締切は守る人だったので、スケジュールを組んで、小刻みにタスクと締め切りを伝えてみたところ、うまく期日までに終わらせることができました。そういった経験も含めて良かったな、と思います。

UPAA

本当に興味深いお話でした。さて、今後のご予定ですが、いよいよ2021年9月に渡英されることになったそうですね。

藤澤さん

はい、友人とも会えますし、本当に楽しみです。

UPAA

学部課程では、Chemistryを専攻されるとか。

藤澤さん

はい。実は、中学生の頃から興味のあった「環境問題を化学の力で解決する仕事」も、まだ気になっているんです。大学のアドバイザーや先生に相談して、学部課程の専攻は、薬学も化学もめざせるChemistryに決めました。

UPAA

なるほど。1つに絞るのではなく、広義に学ぶことにしたのですね。藤澤さんのこれからのご成長が本当に楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。どうぞ気をつけて行ってきてください!

藤澤さん

ありがとうございます!       

インタビュー後、藤澤さんからうれしいご報告をいただきました。Foundation 20/21 Progression Ceremonyにて成績優秀賞(Academic Achievement Award)を受賞されたとのことです。藤澤さん、おめでとうございます!