海外経験は少なくても大丈夫。とにかく最初の一週間を乗り切ろう。

渋川直希さん

専攻:Global Development

UPAAによるインタビューシリーズ。今回は、イーストアングリア大学(University of East Anglia)に進学された渋川直希さんにお話を伺います。イーストアングリア大学は、イングランド、ノーフォーク、ノリッジに本拠地を置くイギリスの国立大学で、国際開発の教育・研究の分野では世界的な評価を得ています。高校時代の友人たちとは異なり、海外経験があまり豊富ではなかった渋川さんが、どのように海外進学を決意し、学んでいったのか。海外大学に関心があるのに、まだ一歩を踏み出せないでいるあなたに、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。

渋川直希さんプロフィール

2020年12月
(高2生)EAT68点(IELTS2.0相当)
2021年6月
(高3生)EAT91点(IELTS4.5相当)
2021年11月
IELTSUKVI 5.0取得
2022年1月
IELTS 5.5取得
2022年3月
かえつ有明高等学校卒業
2022年9月
イーストアングリア大学ファウンデーションコース Global Development Management入学
2023年9月
イーストアングリア大学国際開発学部進学

海外経験はほぼなし。それでもトライしてみようと思いました。

UPAA

それでは渋川さん、本日はよろしくお願いいたします。

渋川さん

よろしくお願いします。

UPAA

渋川さんは、もともと海外進学を希望していたのですか。

渋川さん

かえつ有明高等学校には帰国生や留学経験のある友人が多くて、自然と海外志向が芽生えました。僕自身は高校時代にケンブリッジ研修に2週間参加しただけなので、海外経験はほぼなかったのですが。

UPAA

そうだったんですね。UPAAのことは、どこで知ったのですか。

渋川さん

高2の時に、学校の海外大学説明会に参加したんです。海外経験のまったくない自分でも海外大学に進学できる可能性があると知って、トライしてみようと思いました。

UPAA

「海外経験がないから……」と二の足を踏んでしまう人はけっこういますよね。UPAAがそのハードルを下げられたのなら、うれしい限りです。海外経験のない人にとっては英語の勉強法が気になるところだと思いますが、何か特別な勉強などはしましたか?

渋川さん

特別な学習方法のようなものはなかったですね。高校に「KEO(CollegePathway)」という英語の学習教材が導入されていたので、リスニングや単語学習にはよくそれを使いました。リーディングはIELTSの問題集をひたすら解くという感じです。

UPAA

普段の勉強の延長、という感じでしょうか。

渋川さん

あとは、英語のドラマをよく見ていました。「SUITS*」が好きで、1日1話ずつ見ていました。ほかには英語で話している友達の会話をそれとなく聴いてリスニング力を養ったり、という感じです。 集中的に勉強したのは、高3の夏休みに入ってからでしたね。
*ニューヨークの大手法律事務所を舞台にしたアメリカの法廷ドラマ

UPAA

ドラマを見るのは私もやりました(笑)。勉強の進め方で不安になる人は多いと思います。渋川さんが普段からコツコツと勉強を続けて合格されたということは、とても重要なポイントだと思います。

とにかく最初1週間を乗り切ることが大事です

UPAA

それでは、そろそろイギリス生活についてうかがいたいと思います。UEAがあるのはノリッジですよね。どんなところですか。

渋川さん

自然豊かな緑の多いところで、東京とは全く異なる環境ですね。人も優しくあたたかい土地柄です。大学には、香港、中国、台湾、インドネシア、トルコ、ナイジェリア、ブラジル、アメリカ、カナダ、イタリア、スペインなど、世界中から学生が集まっていて、文化交流も活発です。パスポートは外国だけどイギリス育ち、という人も大勢います。クラスの1/3から1/4が留学生という感じで、イギリス育ちの外国人を含めるともう少し比率は高くなります。

UPAA

国際色豊かで、日本人でも溶け込みやすそうですね。実際に、UEAはUPAAでも人気のある大学のひとつです。寮のルームメイトたちはどうですか。

渋川さん

寮には香港の人が大勢いましたね。着いてすぐに友達になれました。

UPAA

寮生活はいかがですか。

渋川さん

寮は学校とがつながっていて、とても安心できました。24時間体制で先生やアドバイザーに見守られている感じがするんです。カウンセラーもいるので、ケアも万全です。キッチンは共同で、10人ぐらいとシェアするのですが、実際によく使うのは5-6人で、仲良くなってからは、交代で料理当番をしたりしました。

UPAA

楽しそうです(笑)。でも、そうはいっても実質的に初めての海外生活ですよね。はじめは大変だったのではないでしょうか。

渋川さん

そうですね。みんなとても親切なのですが、最初はやっぱり不安でした。買い物もどこへ行ったらいいのか分かりませんし、何がどこにあるのかさっぱりわからなくて……。オリエンテーションでキャンパスツアーに連れていってもらったり、シティツアーで街の様子を見てから、やっと少し落ち着いた感じになりました。

UPAA

これだけ多様な国から人が集まっていると、文化的な違いもありますよね。

渋川さん

大きなカルチャーショックのようなものはなかったのですが、あえていえば、みんな積極的なところにちょっと圧倒されたというところでしょうか。僕の場合はやっぱり、住み続けていくことで、だんだんと順応していった感じです。

UPAA

大変な時期はもう乗り越えた、と。

渋川さん

海外生活は、とにかく最初の一週間を乗り切ることだと思います。いまでは文化を交換しあうソサエティなどにも入っていますよ。

国際開発学を通じて、ビジネスを異なる視点で考える

UPAA

では、そろそろ勉強面のお話もうかがって参りましょう。UEAの国際開発学部は、世界的にも評価の高い研究機関として知られていますね。

渋川さん

そうですね。卒業後は、国連やNGOに進む人も多いです。僕自身は初めはビジネス関係を学んでいたのですが、ビジネスにフォーカスするよりも、広い視野でさまざまなことを学んでみたいと考えていました。
国際開発学は街づくりや都市開発について広く学ぶことができます。ビジネスのようにマネジメント的要素も求められますが、同時にビジネスを違った視点で考えることができます。たとえば、経済学的アプローチによる開発学などと併せて、環境学などの他分野についても学びます。異なる観点から学ぶなかで、各分野のつながりを発見できる面白さがあり、自分には合っていると思いました。

UPAA

FDNを終えて、大学に入ってからはどんなことを学んでいるんですか?

渋川さん

秋学期は必修が3科目ありました。SDGsや環境学など、どれも開発学では外せない内容です。冬学期では、環境学、教育学、経済学、メディア学などの選択科目がありました。たとえば、ニュースで伝える情報が正しいのか、メディアはどんな意図があって伝えているのか、といったトピックについて考察分析したり、開発途上国ではどのように発展していくべきか、エコにするにはどうすれば良いのか、というテーマで、エネルギーの量をグラフ化したりしました。

UPAA

授業は講義形式ですか?

渋川さん

講義とセミナーが対になっています。講義の翌日にセミナーがあって、講義で学んだことを元に、ディスカッションやグループ・プロジェクトに取り組む感じです。初めの講義では地球温暖化について大まかに学び、次の週からはエネルギーについてもう少し細かく、たとえば、環境汚染の観点から海の水質について学んだり、土壌汚染の観点から土の中の地層について学んだりします。

UPAA

グループ・プロジェクトについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

渋川さん

グループ・プロジェクトは、4、5人のグループに分かれて行います。まず、プランニングやアウトラインを決めて、各自が何をするのか選び、担当が振り分けられます。最終的な結論は、結論の担当者が行うのですが、的外れな時には、みんなで話し合いつつ、修正し、完成させていきます。逆に、最初に仮説を立ててから、結論を導き出すこともあります。

UPAA

どのくらいの期間をかけて行うものなのでしょうか。

渋川さん

3〜4週間で終えなくてはいけないものから1学期かけるものまでさまざまです。

UPAA

コミュニケーション力や調整力が磨かれそうですね。実際、リサーチはどのように行うのですか。

渋川さん

図書館でのリサーチに先行して、Google Scholarなどを利用して文献を探したりします。根拠となる数字が必要なことが多いので、政府機関によって発表されたものや論文、実験などの資料を探し出すことが大事ですね。

UPAA

論文の真偽や妥当性を見分ける力も必要ですね。

FDNで学んだ基礎が、大学でのゆとりにつながりました。

UPAA

それにしても、こうしたすべてのことを英語で行っているのですよね。毎日本当に大変だと思いますが、どのように勉強を進めているのでしょうか。

渋川さん

日々、空いている時間は勉強するようにしていますが、おもに図書館で、1日2時間ぐらいですね。

UPAA

あれ? 思っていたよりも少ない印象です。

渋川さん

ただ、大まかな学習計画はいつも立てるようにしています。このあたりは、日本の中学や高校などで培ったスキルが役に立っていますね。

UPAA

さらりとおっしゃっていますが、この計画性や継続性が、渋川さんの強みなのかもしれませんね。

渋川さん

授業の流れはシラバスに記載されているので、それに沿って学習計画も立てられます。Reading Assignmentもすべてシラバスに記載されていますし。だいたい、週に2、3冊のReading Assignmentがありますが、全てを読むことはありません。目次を見て重要だと感じたところや、該当する箇所に的を絞って集中的に読みます。あとは、パラグラフの最初と最後を読むといった感じです。

大学1年後期履修科目「Global Development and the Environment」のシラバス UPAA

効率が非常に高いですね。もともとそういう作業が得意なのですか?

渋川さん

FDNで学んだことが大いに役立っています。基礎となる科目をFDNで事前に学んでいたので、大学では基礎学習以外の部分に目を向けられるゆとりがあったのだと思います。そのあたりは、日本から来ている交換留学生と比べても、実感できるポイントでした。

UPAA

高校までの教育、そしてFDN。積み上げてきたものを糧に、着実に成長できている印象ですね。

渋川さん

そうかもしれません。試験勉強のためのヤマかけもしませんし、こつこつと勉強するタイプですね。

UPAA

期末試験のお話もぜひうかがいたいです。

渋川さん

UEAでは主に学期末試験で評価が決まります。学期末試験といっても、いわゆるテスト形式のものだけではなく、24時間以内に仕上げるタイプのものがあったり、実施方法はさまざまです。

UPAA

24時間で仕上げる?

渋川さん

経済学の試験がそうでしたね。もちろん、睡眠もとらずに、ではありませんよ。たとえば、試験の課題が午前10時に出題されて、翌日の10時までに仕上げる、といった感じです。10問のうち5問ぐらいに回答するのですが、各問いに対して500ワード程のエッセーを書きます。集中すれば1問30分位で書けますが、リサーチすることが前提なので、どのぐらい早く調べられるかが試験を早く終えるひとつのポイントになります。

UPAA

時間があるようなないような……。早く終えられればそれに越したことはないですが。

渋川さん

このあたりは、引用のしかたとか、文献の探し方など、FDNコースでみっちり教えられたことがとても役立っていますね。

UPAA

なるほど、ここでもFDNでの学びがつながってくるわけですね。やっぱり日々の積み重ねが大切ですね。

渋川さん

ええ。それに、FDNの時もそうでしたが、大学に入ってからも学生のサポート体制は整っているので、困った時はいつでもアドバイザーやカウンセラーなどからサポートを受けられます。先生への質問もOffice Hourの時間帯や授業の後に直接きくこともできますし、メールで質問すると先生はすぐ返信をくれます。なので、学業で困ることはありませんでした。

UPAA

UEAの面倒見の良さは、他の方のインタビューでも伺いました。安心して学業に集中できる環境は大事ですね。

渋川さん

UEAでは先生がTutorの役割も担っていて、各学期に1、2回は面談で学習状況の確認をします。大学への進学が危うい場合は別の大学への進学を勧められたりするようですが、幸いにもそのようなことはありませんでした。

今年は新たな人脈づくりにチャレンジ。
将来のことはまだ未定です。

UPAA

さて、9月からは2年生です。何か新しい計画はありますか?

渋川さん

少し早めに帰国して、友達と新入生歓迎行事などにも参加して、新たな人脈づくりしようと話しています。それから、寮を出て友人5人とシェアハウスをする予定で、今からとても楽しみです。家もキャンパスのすぐ隣にあるので、アクセスが良くて便利です。

UPAA

それは楽しみですね。課外活動などの予定もありますか?

渋川さん

僕はまだ、インターンシップはしていないのですが、夏休みの時期とか、開発途上国の支援をするインターンシップなど大学でよく紹介してくれますね。たとえば、ルワンダの街キガリやカンボジアの支援活動などです。僕自身は発展後の経済や環境の課題のほうに興味がありありますが、将来のことはまだ未定です。あと2年あるので、じっくり考えたいと思います。

UPAA

渋川さんのことですから、ひとつひとつ着実にステップをクリアして成長されていくことと思います。今後の大学生活も楽しんでください。本日はありがとうございました。