中島理乃さん
専攻:経営学
UPAA事務局によるインタビューシリーズ。今回は、イーストアングリア大学(UEA)に進学された、中島理乃さんです。中島さんは、インターナショナル・イヤーワン(IYO)を経て、この9月からは大学2年生となります。IYOは大学を3年間で卒業できるプログラムで、時間的にも費用的にも大きなメリットがあります。しかしその反面、入学時の英語の要件も高めに設定されていることが少なくありません。海外進学一本に絞り、果敢なチャレンジを成功させた中島さんに、受験当時の勉強や大学の授業の様子について伺ってみました。
中島理乃さん プロフィール
中島さん、本日はよろしくお願いいたします。
中島さんよろしくお願いします。
UPAAノリッジでの生活はいかがでしたか?
中島さん東京から行くと、とても田舎に感じられます。小さなスーパーが歩いて10分ほどのところにあって、生活に必要なものはそこに揃っています。ただ、必需品のみなので、ちょっと何かプラスアルファでほしいな、という時は、バスで20分ぐらいのところにあるシティセンターに行きました。自転車では坂が多くて大変なので、主にバスを利用していました。
イングランド東部にあるノリッジ。静かで住みやすい街として知られている。 UPAA大学では寮に入られたんですよね。
中島さんはい。思っていたよりも部屋が広くて快適でした。食事は、自炊もしますが、テイクアウト、外食などいろいろです。日本の食材は、オンラインショッピングで購入したりしていました。寮は教室までは徒歩5分ぐらいなので、とても助かりました。
UPAA勉強するにはうってつけの環境ですね。さて、この9月から、いよいよ大学2年生です。
中島さんはい、無事に試験をパスしました(笑)
UPAA順調ですね。このまま行けば、あと2年間で大学を卒業することになります。振り返ってみて、いかがでしょうか。IYOは入学時に求められる英語のレベルも高いですし、苦労されたのではないでしょうか。
中島さんそうですね。クラスは英語のレベル毎に分かれていたのですが、やはり大変でした。でも、授業は留学生だけなので、先生の話す英語もゆっくりで、内容もわかりやすいものでした。
UPAA受験の時は、どのくらい英語に力を入れていたのでしょうか。
中島さん高校3年の夏の終わりに、海外大学進学一本でいこうと決めて、そこからIELTSのスコアを取るために、3か月間、一日2時間程の勉強を続けました。少ないと思われるかもしれませんが、私の場合、その方が集中してできるんです。
UPAA短期集中型なんですね。
中島さん一日中、英語を勉強したこともあったのですが、いま振り返ってみると、何となく勉強していただけで、あまり身につかなかったように思います。
UPAAIELTSについては、何か特別な対策をされたのでしょうか?
中島さんスピーキングが少し苦手だったのですが、その部分を母校のネイティブの先生が二人がかりでサポートしてくれました。最初はおしゃべりから始めて、少しずつ会話に慣れ、だんだんと先生の質問に答えられるようになりました。IELTSのスピーキングでスコアがとれたのは、二人のバックアップがあったからだと感謝しています。大学の授業ではプレゼンテーションの機会もありますが、この高校時代の積み重ねこそが私の原点だと思っています。二人の先生とはいまでも親しくしていただいていますよ。
UPAA良い先生に恵まれたんですね。ところで、国内大学の受験は考えなかったのですか?
中島さんもし国内の大学も受けることになっていたら、オープンキャンパスや受験勉強に時間や労力を割かれていたと思います。志望はあくまでも海外大学ですから、貴重な時間をIELTSの試験対策に当てられたのは大きかったです。書類の準備や手続きの面では、高校の先生やUPAAの皆さんにサポートしていただきましたし、本当に助かりました。
UPAA結果が出て何よりです。せっかくなのでこのまま英語の話を続けましょう。IYOではどのような授業が行われていたのでしょうか。
中島さん
授業では、Listening 、Speaking、Reading 、Writingの4スキルを中心に学びます。授業は週に8コマあって、各スキル2コマずつとなっています。担当の先生が2人いて、それぞれListening & Speaking、Reading & Writingを担当しています。Writingの授業では文章の言い替え方を、Readingの授業では類義語や文法的要素などを学びます。Listeningの授業ではTED※をよく利用しますね。経済に関するプレゼンテーション動画を見た後に、先生からの質問があり、学生がそれに回答していく、という流れです。
※アメリカの非営利団体が実施している講演会「TED Conference」の動画のこと。「Ideas worth spreading」をコンセプトに、世界各国の知識人が登壇している。非英語圏では英語学習コンテンツとしても人気。
授業で扱うテーマやテキストは、やはり専攻の内容に沿ったものが多いのでしょうか。
中島さん
そうですね。私の場合はビジネスの専攻なので、英語の授業も経済やビジネスに関するものが多かったです。英語の授業のカリキュラムは、専門科目の授業をサポートするように組まれていて、専門科目の予習的要素もあるんです。一石二鳥ですね(笑)。Readingの授業なら専門用語を学べますし、Speakingの授業では「会社についてのプレゼンテーション」が課題になったこともあります。レポートを書く時も、Writingの授業で事前に書き方や参考文献の選び方を学びました。
授業はスキルごとに分かれていましたが、実際にはそれほど明確な境目がなかったように思います。先ほどのListeningの授業なら、先生から「プレゼンターは、どういうタイプの経営者だろう」などの質問が投げかけられて、学生が意見を発表する、といったSpeakingの要素も含まれますし。それぞれのスキルを総合的に身に着けていく感じでしたね。
充実した時間を過ごされたようですね。英語もかなり上達したのではないですか?
中島さん高校でお世話になったネイティブの先生に、とても上手になったとほめられました。たしかに年末年始の休暇を終えて、イギリスに戻ってからは、英語で話すテンポが良くなったと思います。以前は話したいことがあっても単語が思い浮かばないと、焦って言葉に詰まったりしていたのですが、今では単語がわからなくても、話したい内容を伝えられるようになりました。うまく別の表現に言い替えられるようになったと思います。
すばらしい成果ですね。少し話題を変えて、英語以外の授業についても伺ってみましょう。どのような専門科目を履修していたのですか?
中島さん専門科目は、Macroeconomics、Microeconomics、Accounting、Organisational Behaviour、Quantitative Methodの5科目です。履修する科目は専攻ごとに決まっていて、選択科目はありませんでした。それぞれ週に1度、間に休憩をはさんで2時間の授業です。専門科目は高校の応用のようなところもあるので、それほど難しいとは感じませんでした。英語の授業の方が大変ですよ。
UPAA高校時代の得意科目に通じるところがあるのでしょうか。
中島さんいえ、高校の頃は得意科目や不得意科目はなくて、成績は平均していました。ただ、授業中にノートをまとめる習慣があって、テスト前はいつもそのノートを見ながら勉強していたんです。ノートがきちんと取れていないとテスト前に困るので、後で読み返した時にわかるように日頃からきちんとまとめるようにしていました。今でも、基本的には、授業で学んだことをその日のうちにノートにまとめるようにしています。この習慣は、イギリスでも役に立っているな、と感じます。
中島さんの授業ノート。読み返すことを前提に書かれているので、情報がとても丁寧に整理されている。 UPAAまさに継続は力なり、ですね。授業はどういった形式で行われるのでしょう。
中島さん講義形式やディスカッション形式など、いろいろです。MacroeconomicsとMicroeconomicsはパワーポイントを使った授業で、事前に自分で資料をプリントアウトします。数学的要素がありますが、それほど大変ではありません。Accountingの授業は、講義と練習問題が中心で、先生が作ったテキストを使って授業が進みます。計算問題なので、私にとっては楽な授業でした。
UPAA逆に、苦労した授業はありますか?
中島さんOrganisational Behaviourですね。ディスカッションや話し合いが多かったので、少し苦手でした。話し合いに正解・不正解はないのですが、意見を言うのが大変です。クラスには中国系の学生が多かったので、中国語が飛び交って、話している内容がわからなくなることもありました。もちろん、そんなときには先生が注意しますが……。
UPAA留学生が集まる環境ならではの体験ですね(笑)
中島さんはい。「人との調和をとるにはどうすればよいか?」とか「犯罪者が経営するレストランについて」とか。いろいろなテーマについて意見を求められるのですが、英語で自分の意見を論理的に伝えるのは難しく、苦労の連続でした。
UPAA授業そのものはどういった内容だったのですか?
中島さん
ビジネスにおけるチームワークがテーマです。「どんな種類のリーダーがいるのか」とか「どんなタイプのリーダーに人はついていくのか」といったことを客観的に分析する方法を学びました。「The Apprentice※」を見ながら「なぜこの人はここで脱落したのか」を分析したり、南アフリカの起業家たちをビジネスの内容や収益などの面から多角的に評価したりしました。
※有名実業家がホストを務める、アメリカで人気のビジネス・リアリティ番組。参加者には毎回様々な課題が課せられ、本採用をめざして競い合う。毎週一人が脱落していき、最後に生き残った人が勝者となる。
ディスカッションでは苦労しましたが、レポートの課題があったので、ここで挽回をしようと張り切って取り組みました。少し時間をかけて構成を考えたり、文章にまとめたりすることは得意なので、私に合ったやり方だったと思います。ただ、最後の課題を終える前にCOVID-19の影響で授業がオンラインに切り替わり、提出が保留になってしまいました。先生の講評を受けられないまま授業が終わってしまったのが心残りです。
こんな事態になるとは思いもよりませんでしたね。レポートは残念でしたが、きっと中島さんの力になっているはずです。ほかの授業ではどんな課題がありましたか。
中島さん経済の授業では、「Shadow Economyについて書きなさい」という課題がありました。1,500ワード以内のエッセーで、それほど長くはありませんが、リサーチをしたり、参考文献の引用文をつけたりして、客観的に論じることを求められました。英語で書くのは難しかったので、最初は日本語で書いてから英語に直しました。担当の先生は、内容についてはコメントをくれますが、英語の文章についてはあまり言いません。母校のネイティブの先生にも見てもらい、何とか書き上げました。
UPAA質問やわからない点があるときはどうしているのですか。
中島さん週1度、授業時間外にHelp Deskが設けられるので、その時に質問するようにしています。1対1で対応してくれるので、疑問点の解消になります。あとは、先生方に直接メールで聞いたりもしますね。
なるほど。課題の話に戻りましょう。課題は1人で取り組むものが多かったのでしょうか。ほかの学生との共同作業などはありましたか?
中島さんビジネスの授業では、5人1組のグループで「企業広告」を作りました。タクシー会社、Red Bull、Sport Park、UEA、iPhoneなどの企業から1社を選んでCMを作り、レポートをまとめて発表するというものです。
UPAA面白そうな課題ですね。
中島さん先にCMを作らないと発表の準備ができないので、時間配分が大変でした。CM制作は、動画を撮影して、グループで話し合いながら編集作業を行い、最終的に30秒から1分程度の長さにまとめます。発表の際は、ターゲット層、企画の意図、訴求点など、1人が1つのポイントを受け持ち、各自1分程度でプレゼンテーションを行いました。私たちは、大学生などの若い人をターゲットにしていたので、プレゼンテーションでも映像やBGMの意図をしっかり説明しました。
UPAAグループの構成はどんな感じですか?
中島さん5人1組で、女子3名、男子2名。私以外は中国籍でした。比較的仲の良い学生がこのグループに誘ってくれました。
UPAAグループプロジェクトとなると、一人でできる課題とは勝手が違いますよね。トラブルはありませんでしたか?
中島さん
私のグループは真面目な人が多かったと思います。特にもめごともなく、スムーズに進みました。集まる時も時間通りでしたし、プロジェクトも時間通りに終わりました。発表の内容については、少しポイントがずれているかな、と思う点もあったのですが、何となく言い出せなくてそのままになってしまいました。内容に問題があったわけではないのですが、もし言っていたら、発表の内容をもっと良くすることができたのかもしれません。
グループプロジェクトは、協調性があってバランスをとれる人が向いているのかな、と思います。少人数なので、あまり話したことのない学生とも話すことができて良かったです。
他にはどんなプロジェクトがありましたか?
中島さんAccountingの授業では、企業の業績評価を行いました。スーパーマーケットや飛行機会社など、いろいろな業種の企業から選べるのですが、私たちのグループでは飛行機会社についての評価をまとめました。景気が良さそうに見えても、分析項目によっては将来性に疑問が生じることもあります。3人で手分けをして、財務諸表などから利益、人件費、生産性などを計算して、現状、リスク、将来性などを客観的に分析しました。最後は英語の先生とAccountingの先生の前で発表するのですが、他のグループの発表が見られないのは残念でした。ただ、財務諸表などをしっかり読み込むことができたので、良い訓練になったと思います。
UPAA他の国の学生と組むことが多かったようですが、中島さん以外にも日本からの学生はいたのですか?
中島さん国際開発学の専攻には何人かいたようです。ただ、お互いに忙しかったり、私もシャイだったりして、挨拶を交わす程度でした。中国系の学生は大勢いますね。これまで中国のことはよく知らなかったのですが、香港、中国、台湾では全く違うんだな、と改めて感じました。香港からの学生は英語が堪能な人が多いですね。とてもフレンドリーです。中国人の友人は、旧正月の時期にディナーに招待してくれました。中国のしゃぶしゃぶをご馳走してくれて、いろんな話ができてとても楽しかったです。
UPAAクラスの友だちとは、一緒にオフを過ごしたりするのですか?
中島さん普段は勉強に忙しいので、キャンパス外に出かける機会はそれほどありません。一度、香港の友人とロンドンに行ったぐらいですね。木曜日の授業が午前中だけなので、午後、シティセンターにショッピングに行くのが唯一の息抜きでした。
UPAA本当に忙しそうですね。外出はあまりしていないのですか?
中島さんまったく、というわけではなくて、一度一人旅にチャレンジしたことがあります。初めは友人と行くつもりだったのですが、スケジュールが合わなくて、1人で出かけることになりました。自然のあるところがいいな、と思って行きたいところをリストアップしていたのですが、気づいたら全部イギリスの西側に固まってしまって。UEAのあるノリッジは東側にあるので、現地までの時間を考えて、比較的行きやすいチェスターにしました。チェスターにはイギリス最大の動物園があるので、まず動物園に行って、翌日は街をぶらぶらしました。2泊3日の短い旅でしたが、現地の人とも仲良くなれましたし、ノリッジとはまた違う経験ができたと思います。
イギリスで最も美しいともいわれるチェスターの街並み。白い壁に黒い木組みが特徴的なチューダー様式の建物が軒を連ねる。COVID-19の影響で、UEAもオンライン授業になりましたね。帰国を決めたのはいつ頃だったのでしょうか。
中島さん3月中旬でしょうか。日本でも感染が広がり始めた頃だと思います。UEAではまだ感染が広がっているわけではなく、大学から休校やオンライン授業についてのアナウンスはありませんでした。大学も先生も「みんなの安全は守る」と言って、学生が不安にならないように親身になって対応してくれました。ただ私は、いずれ感染は広がるだろうし、時機を逃すと日本に帰国できなくなるかもしれないと思い、準備を始めました。
UPAA大学の判断を待つのではなく、早めにご自身で判断されたのですね。
中島さんちょうど出発の日の直前に休校が決まり、オンライン授業の実施が決まりました。帰国が1週間遅ければ航空券が取れなかったかもしれませんし、タイミングとしては最適だったと思っています。
UPAA間一髪ですね。オンライン授業はいかがでしたか。
中島さんアジア圏の時差を考慮して、日本時間の夕方から19時頃にライブで行われていました。多少質問のしづらさはありましたが、授業の質としては、普段と大きな差はなかったと思います。ただ、学期終了まで数週間でしたし、グループプロジェクトも特にない状況だったので、あまり影響がなかったのかもしれませんね。
UPAAありがとうございました。最後に、このインタビューをご覧の皆さんにメッセージをお願いします。
中島さん興味があったら、ぜひ挑戦してほしいと思います。私もイギリスに行って度胸がつきましたし、新しい出会いもありました。やってみないことにはわかりません。ぜひチャレンジしてみてください!
このインタビュー記事を読んだ人はこちらもチェックしています