Column

「「コンピューターサイエンス」を学ぶこととは」インタビュー

インタビュー協力

ジャネット・チン准教授
(イーストアングリア大学コンピューターサイエンス・スクール)

目次

インタビュー

コンピューターサイエンスが学べる大学と専攻

ご自身とUEAのコンピューティング学部の紹介をお願いします。

教授:皆さん、こんにちは!英国イースト・アングリア大学コンピューターサイエンス・スクール准教授のジャネット・チンです。コンピューターサイエンスにおける私の主な専門分野は、スマート技術やモノのインターネット(IoT)などの分野におけるヒューマン・コンピュータ・インタラクション、ユビキタス・コンピューティング、リアルタイム・エンドユーザー・プログラミングシステムの開発などです。UEAのコンピューターサイエンス・スクールの学部課程と大学院課程で教鞭をとっており、入学に関しての責任者でもあります。



UPAA: コンピュータサイエンスを学ぶということは、どういうことでしょうか?学生が学ぶ主なことは何ですか?

教授:コンピューターサイエンスは魅力的な学位課程であり、その範囲は広いものです。もちろんプログラミングも学びますが、それだけではありません。ビッグデータの扱い方やその応用、機械学習や人工知能、ヒューマン・コンピューター・インタラクション、サイバーセキュリティなどのデータ・サイエンスを学ぶことになります。しかし、コンピューターサイエンスを学ぶということは、気候変動や国連の持続可能性目標に関連するものを含め、コンピューティングが世界の現実の問題をどのように解決できるかということでもあります。



UPAA: なぜ学生はコンピューターサイエンスを学ぶべきなのですか?

教授:私はコンピューター科学者なので、明らかに考えに偏りはあります。しかし、コンピューターサイエンスは、創造性を発揮し現実世界の問題に対する解決策を見出すためのツールを与えてくれるので、とても興味深い学問だと思います。理論的なだけではありません。ポジティブな影響を与えることができる実行可能な解決策を文字通り生み出すことができるのです。大学生として、みなさんは卒業後の将来のキャリアについても考えるべきです。就職という点では、コンピューターサイエンスは人文科学や社会科学の卒業生よりも多くの収入を得ることが期待されています。コンピューターサイエンスは、とても面白く多様なキャリアを持ちながら、高い収入を得ることに役立つ学位なのです。どのような分野で働くことになっても、テクノロジーとコンピューターサイエンスを理解することは、将来の仕事において本当に大切なものとなります。



学生にどのような特徴、資質を求めていますか?

教授:私たちは、英語の力と数学的要素のある科目の履修などの標準的な入学条件を設けています。コンピューターサイエンスの根底にある原理は数学に基づいているため、数学の能力は重要です。しかしそれとは別に、私たちは、世界に対する好奇心を持った学生を本当に求めています。例えば、みなさん、コンピューターゲームが好きかもしれませんね。しかし、他の人に遊んでもらえるようなゲームを自分で作ってみたいという好奇心や熱意はありますか?あるいは、家の中にある "スマート "な機器に興味があるかもしれません。ドアベルや洗濯機でさえ、今やインターネットに接続されているかもしれません。もっと深いレベルで研究してみたいという好奇心はありますか?どの分野に興味があるのかは重要ではありません。世の中に対して好奇心を持ち、コンピューターサイエンスのスキルや知識を問題の解決のためにどう利用するのかが重要なのです。
 私たちは、マーケティングに熱意があり、消費者行動に好奇心のある学生を求めています。この販促は誰にアピールしているのだろう?なぜこの商品をこのようなスタイルで宣伝しているのか?戦略は何なのか?スーパーマーケットを歩いているとき、こういったことを考えてもらいたい。成功するマーケターになるためには、ビジネスや消費者行動に関心を持つ必要があるのです。



UPAA: コンピューティングの勉強について、よくある思い違いにはどのようなものがありますか?

教授:マーケティングに関する最も昔からある思い違いは、マーケティングは偏った解釈や嘘がすべてだというもので、これは全くそうではありません。製品やサービスを宣伝するには、マーケターとしてそれを本当に信じなければならないと私は信じています。宣伝しようとしている製品やサービスを純粋に愛しているか、少なくとも敬意をもっていなければいけません。マーケターとして、世の中に提供するものを伝えるとき、あなたは組織の中で倫理的あるいは道徳的な羅針盤となることを期待されています。マーケティングとは嘘をつくことではなく、伝えようとするメリットや特徴を選ぶことなのです。最も大きなもののひとつは、コンピューターサイエンスは単なるプログラミングで、一日中部屋の中でコードを書いて過ごすものだというものです。しかし、全くそのようなものではなく、コンピューターサイエンスは、問題解決に焦点を当てた、より幅広い学問なのです。他の思い違いは、コンピューターサイエンスは男性優位の学問だというものです。私が学生としてコンピューターサイエンスの課程を始めたとき、クラスで女性は私だけでした。今では多くの女性学生がコンピューターサイエンスを学んでおり、例えばUEAでは学生の22%が女性です。素晴らしいプログラマーである女子学生もいますし、データ・サイエンスに強い興味を持つ女子学生もいます。女子学生は、男子学生にできることは何でもできるのです。



UPAA: コンピューターサイエンスの学生はどのような施設を利用できますか?

教授:UEAには2019年にオープンした最新のコンピューターサイエンス・ラボがあり、学生が必要とするソフトウェアやハードウェアがすべて揃っています。私たちは、SPSS、Adobe Software、Studio Codeなど、産業界で使用されている最も一般的なソフトウェアを使っています。IntelliJを使用し、C+、C++、Python、Javaなどの主要なプログラミング言語をすべて教えています。しかし、使用するソフトウェアは、関心のある分野や選択するモジュールによって異なります。もちろん、コンピューターサイエンスの学生は、美しいキャンパス、学生組合、スポーツ公園、図書館を含む、UEAのあらゆる施設を利用することができます。



UPAA: 学部(ファカルティ)では学生に対してどのようなサポートがありますか?

教授:私たちは学生サポートと就職スキルに重点を置いており、学生が成功することを目標にサポートを行っています。学生が入学すると、アカデミック・アドバイザーが割り当てられ、何か困ったことがあった場合、学生のための最初の窓口となります。私たちにはベター・サイエンス・チームというチームがあり、これは経験豊富な学生と上級アドバイザーによるバディ・システムで、必要とする学生をさらにサポートしています。コンピューターサイエンスではしなければならないことが学生にはたくさんあるので、追加の時間をモジュール・レベルで設け、予約不要のセッションで学生が私たちに相談できるようにしています。この学位課程は非常に人気があり、100人以上が出席する講義もありますが、ラボ・セッションやゼミもあり、そこでは学生スタッフの比率は1:16なので、学生は実践的なサポートを受けることができます。もちろん、UEAには大学全体の学生サービスチームもあり、精神的・身体的な健康支援サービスや、授業以外で直面する問題についてのガイダンスなど、専門的なサービスを提供しています。一生懸命に勉強し、勉強への姿勢の良い学生は素晴らしい結果を得ることができますが、誰にでも助けが必要な時があります。もし助けが必要なら、私たちが力になります。



UPAA: コンピューターサイエンスの学位課程を修了した後、どのような進路に進むのが一般的ですか?

教授:本当にたくさんの道があります。データ・サイエンティストやプログラマー、開発者になっている生徒もいます。大学院に進み、さらに大学の先生や学者になった人もいます。コンピューターサイエンスやデータ・サイエンスのスキルを活かして、民間の他の部門で働いている人もいます。私の教え子の一人は投資銀行家にまでなりました。学生が就くことのできる仕事は多岐にわたります。



UPAA: コンピューターサイエンス卒業者の将来の就業機会についてはどのように予想しますか?

教授:主な分野は人工知能だと思います。UEAはGoogleと共同でTensorFlowというプロジェクトに取り組んでおり、次世代のAIアプリケーションを開発しています。これが将来の仕事のカギとなるでしょう。ビッグデータは依然として重要ですが、問題の解決や物事のさらなる効率化へのデータを応用にAIをどのように活用できるかという点で、大きな進展があります。もちろん、今現在AIを活用するにはリソースや文化的な制約がありますが、これは将来の卒業生が必ず取り組む主な課題、そしてチャンスです。
 もうひとつの分野は、気候変動を含む世界の問題を解決するために、コンピューティングをどのように機能させるかというものです。第一世代のコンピューティング・サイエンティストたちは、計算システムのエネルギーやカーボン・フットプリントにはあまり注目していませんでした。インターネット、テクノロジー、デバイスによるカーボン・フットプリントは非常に大きく、現在と未来のコンピューティング科学者は、より多くのことをこなしながらもより少ないエネルギーで動作するシステムやアプリケーションを作る必要があるのです。

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